旬をすぎてしまったのでちょっと遠慮がちに

  • 2006.10.25 Wednesday
  • 01:40
本番真っ只中に突入する直前に、13歳のハローワークについて書きました(「んんん?」)。

で、それについてfringeの荻野氏の方から更にリアクションがあったのですが、多忙すぎて結果として沈黙する結果になってしまいました。というわけで、いい加減、旬を逃した感が強いですが、軽く思うところを。


1.反応は遅くてもいい。


これは荻野氏もわざと煽っているだけだと思うのですが、反論があるならもっと早く、というのは自分にはあまり理解できない書き方でした。もちろん荻野さんの真意は、もっと演劇人は現代の話題にリアルタイムで反応をしろ、ということだと思うのでこれは、まあそうですね、ぐらいの話なんですが。当然の話として、反論は遅くとも価値がある、と私は思っています。


2.現状否定が発展に繋がることもあれば、安易な自虐がレベル低下を齎すこともある。


荻野氏は村上氏の書いた「劇団員」の項目に辛口の叱咤激励、を見て取っているようです。私も、そういう意味合いを込めてあの記事が書かれたのだろうとは思います。ただ、それは演劇人が勝手に受け取ればいいこと。13歳と面と向って話す時にはやはりあの本の説明は否定する必要が出て来る、それが私の感覚です。

「ハーフタイム」の演劇関係者を「舞台俳優」に組み込むことができるなら、「劇団員」にカウントされざるを得ない演劇関係者は実際のところほとんどいなくなるわけで、ある意味荻野氏の捉え方は、非常に脳天気な捉え方といえます。

やはり村上氏の書き方からすれば「報酬」とは、かなりの部分の生活費を捻出できる程度の額を想定していると読むのが妥当ではないでしょうか。というか、これを読んだ13歳はそう思うような気がします。


私だって現状肯定ばかりしようとは思いませんが、安易な自虐は更なるレベル低下を招くように感じるのです。現状否定がすなわち未来志向である、という考え方にそって自虐をしていても中学生は納得しないはずです。プロだと言うなら演劇関係者も誇りを持たなくてはいけない。そして誇りのよりどころは何も「報酬」には限らない。



ところで、今公演の小屋入り中に思わぬ体験をしました。

劇場のほうからの提案で、アゴラ劇場に社会体験に来ている地元の中学生に対して「劇団の仕事とは何か?」を喋ってくれないか、ということを依頼されたのです。で、なんだかよくわからないながらも本番の合間に彼らと昼食をとりつつ話をする機会を持つことができました。


演劇を仕事とする喜びってなんですか?


という質問に答える中で私が感じたのは、これが「報酬」とは違う贅沢をするための仕事だということです。劇団制作が、質の高い舞台を創造するためには「報酬」や興行成績にこだわるのは当然ですし、今のカンパニーにはその意識が欠けている、という荻野氏の危機感はわかります。

ただ、私が短い昼食の時間を使って中学生に伝えたいと思ったこの仕事の贅沢とは、「報酬」の多い少ないとは全く違う次元でいい大人が真面目にああでもないこうでもないと時間と労力を費やすことができるという贅沢です。

経済基準の価値観を中学生も持たねばならない時がきます。というか、既に彼らはそれを持っています。私が伝えたいと感じたのは、それとは全く違うモノサシもあるんだ、ということでした。どちらの尺度が優れているとか、劣っているではなく、違うモノサシがここにはある、ということを私は伝えたかったのです。


どんな仕事でも一流になれば報酬も伴なってくる、


というのは一つの幻想です。それを信じてもいいでしょうが、そんな幻想は捨ててもいいんです。私が13歳のハローワークを読んで、役者に関するあの区分に決定的に欠けていると感じたのはそういった視点です。


ハローワークは職業案内であって人生案内ではないのだから、あの記事は職業案内として読むべきだ、という意味のことを荻野氏は書いていますが、その主張は少し苦しいのではないかと思います。
というのも、あの本は職業案内のレベルを越えて、人生案内レベルの記述をする意図を明らかに持っているからです。それをあくまで「職業案内」としてのみ解釈しようとするのは無理があります。

良くも悪くもあの本がベストセラーになったのは、職業案内以上の村上氏の「私見」というべき情報を大幅に盛り込んでいるからでしょう。それはわかりやすさと読みやすさを生んだ反面、大きな偏見を生んだわけですから現場からの修正が段々と加わっていけばいいではないでしょうか。
コメント
>>「ハーフタイム」の演劇関係者を「舞台俳優」に組み込むことができるなら、

多分ここ「ハーフタイム」の捉え方が違っているような気がします。
荻野さんの定義は、
・練習時間も劇場での待機時間もチケット売る時間も含めて報酬の対象となる
・それは最低賃金以上である
というところでしょうか?
広田さんの定義は
・交通費程度でも良いので、「ギャラ」という、名目のお金を受けてとっている
というところでしょうか?

>>ある意味荻野氏の捉え方は、非常に脳天気な捉え方といえます。

こういう表現は、やめてほしいですね・・・
広田さんがブログで書かれていることは、この表現を除いてすべて同感です。
私も自分のブログ
http://sakuteki.exblog.jp/m2006-10-01#3925128
で書いたように、かなり立ち位置は近いと思います。

>>ターゲットや論点が違うにもかかわらず、端々に私の文章を引き合いに出して
比較するのはいかがかと思います。

こういうことだろうと思います。
ご指摘ありがとうございます。
ハーフタイムの捉え方が確かに雑だったように思います。
えー、fringeのほうでも大きく取り上げていただいたようなので、もう一本、記事を書いてみて、その中でもう一度ハーフタイムについて考えてみたいと思います。
  • 広田
  • 2006/10/30 1:16 AM
  • 303403
  • 2007/07/24 5:29 PM
  • 577498
  • 2007/08/06 9:56 PM
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック
ひょっとこ乱舞の広田淳一氏がこの件について再度書かれています。 膝ブラック「旬をすぎてしまったのでちょっと遠慮がちに」 私も議論のための議論はしたくないのですが、見過ごせない部分がありますので、以下を記しておきます。...
  • fringe blog
  • 2006/10/29 5:10 PM

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< April 2017 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

recent trackback

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM