安全保障法制を巡っての、劇作家協会とのあやれこれや。続編。

  • 2016.01.04 Monday
  • 12:15

あけましておめでとうございます。広田です。
年内にまとめを書こう書こうと思っていて、ついつい年が明けてしまいました。

今日は、劇作家協会との件のあれこれについて、その続報について書きます。

年初からあまりウキウキした話でなくて恐縮ですが、さりとて積み残したままでは先に進めない課題だろうと思いますので、ここでひとつ、整理をしておこうと思います。ちょっとばかり長いやりとりですので、まずはこれまでの経緯を紹介しておこうと思います。



ことの発端は劇作家協会が日弁連の声明に対して賛同を示したおり、広田より下記の問題提起を行ったことです。


劇作家協会への質問状、「安全保障法制等の法案」について(微調整版)




そして、劇作家協会からいただいた反論に対しての広田からの再反論がこちらです。


続・劇作家協会への質問状、「安全保障法制等の法案」について(微調整版)



さて。その後の顛末です。
2015年7月31日付けで広田から劇作家協会へ、下記のメールにて再度質問をいたしました。

 

お世話になっております、会員の広田淳一です。
先日、安全保障関連法案について質問をさせていただき回答を頂戴したものです。
本日は、もうひとつ質問があってご連絡さしあげました。お答えをいただけましたら幸いです。


【質問の前提】


・私は劇作家協会の会員です。
・私は今回の安全保障関連法案への劇作家協会の声明には賛同できません。
・ましてや日弁連の宣言への賛同表明には、はっきりと反対の立場です。
・私は、自分の信念とまったく異なる政治声明に賛同しているかのように誤解されることが苦痛です。
・そこで私は、日弁連の声明への賛同に話を限定し、協会として合意を形成する必要はないし、賛意を示す必要もない旨を意見いたしました。
・その結果、「あえて意見表明をされた広田さんの勇気に、敬意を表します。」とのお言葉をちょうだいいたしましたが、今現在、具体的な方針転換は何もなされていないと感じております。
・私は、劇作家協会に賛同声明を取り下げてほしいと願っています。


そこで、質問です。

【質問】

・言論表現委員会の方々は、私のような政治的立場の会員に、どうして欲しいのでしょうか?

私としては現状のような政治的活動を劇作家協会が継続し続けるのであれば、協会員であることによって、演劇とは関係ない部分での自分の思想・信条を大きく偽るような形となってしまい、そのことに精神的な苦痛を感じております。私のような政治的立場の人間に、言論表現委員会、あるいは理事の方々はどうしてほしいと考えておられるのか、ぜひご意見をお聞かせ願いたいと思います。なお、回答は合意文章でなくても結構ですし、どなたからのものであっても結構です。むしろ個人名で回答してもよい、という方がいらっしゃるなら、ぜひ個人名で回答をお願いしたいと願っております。

私は、劇作家協会が、会員に政治的党派性を持つことを強要することのない、広く開かれた集団であることを願っております。
しつこくて恐縮ではございますが、何卒、よろしくお願いいたします。



このメールに対してすぐには返事は来ませんでした。しかし、その間に、劇作家協会はさらに「『安全保障関連法案』『集団的自衛権行使を認める閣議決定』の撤回を求めるアピール」を発表しておりました。ここでは、何故だかよくわかりませんが特定秘密保護法に関する話といっしょくたになって集団的自衛権行使への反対アピールがなされています。このような論の立て方では論点が拡散するばかりですので、僕は特定秘密保護法に関してはここでは触れません。ですが、なぜ言論表現委員会の方々は、こうもデリケートな政治課題に対して劇作家たちがこんな単純な文言の下に連帯しうると判断なさったのか……。その感覚に対しては強く疑義を呈しておきたいと思います。僕にとっては、このような政治運動に巻き込まれるのは、劇作家協会の活動としてはまったく想定外であってとても理解しがたいものです。

当然ながら、僕はこのアピールの内容にもまったく賛同できません。したがって、このアピールへの抗議の意味も込めて再度、質問をいたしました。それが8月13日に広田が協会へ向けて出した下記のメールです。
 

劇作家協会さま

お世話になっております、アマヤドリの広田です。

「安全保障関連法案」「集団的自衛権行使を認める閣議決定」の撤回を求めるアピール 


を、拝見しました。
先日お伺いしたことをもう一度、みなさんにお尋ねしたいと思います。

【質問】

・言論表現委員会の方々は、私のような政治的立場の会員に、どうして欲しいのでしょうか?


政治的アピールも大切なのでしょうが、一会員の声にも耳を傾け、勇気をもって回答する必要があるでしょう。件の質問以降、半月が過ぎましたが、なんの返答もいただけず大変残念に思っております。前回も申し添えましたが、回答は個人でも結構ですし、言論表現委員会の方々でなくとも結構です。お忙しいところとは思いますが、検討中なら検討中と、何か応答をするべきでしょう。どうぞよろしくお願いいたします。



その後、協会より返事をいただきました。
それが下記の内容です。

 

お世話様です。お返事が遅くなりましたが、7月31日付けでご質問
いただいた件につきましてお返事申し上げます。

まず、日弁連への賛同表明の理由につきましては、7月14日付けの
回答でご説明した通りです。
既に申し上げた通り、発表されるのはあくまで法人としての協会の意見
であり、それは代議制に基づく会内手続に従って発せられています。
全構成員の意見が常に一致することなどあり得ないからこそ代議制が
取られており、協会は「政治的不一致があり得るあらゆる問題について
沈黙する」という立場には立ちません。
上記は、会員個人の政治的立場の表明や活動を制約するものではなく、
それ以上に「どうして欲しい」というような要望を協会は出す立場に
ありません。

よろしくお願いいたします。


2015年8月19日

一般社団法人日本劇作家協会 言論表現委員会



それに対してさらに広田より、2015年08月21日付けで、再度のメールをいたしました。

 

劇作家協会 言論表現委員会さま

お世話になっております、広田です。
何はともあれご返信いただけまして、ありがとうございました。

しかし回答を拝見し、ありがたいと思う一方で、木で鼻をくくったような対応とはこういうことを言うのだな、という印象を持ちました。少々、悲しい思いがいたします。そもそも、あの政治的アピールを積極的に出したのはみなさんです。そのアピールは誰に向かってなされているのでしょうか? 少なくとも、みなさんのアピールに最初から賛成の人たちに向けて、ではないはずです。つまり、みなさんがアピールを聞いてほしい人たちとは、最初の段階ではみなさんのアピールに反対の人たちであるはずです。政府与党もそうでしょう。それを支持する人たちもそうでしょう。僕もまたそうでしょう。あの法案に関しての賛否は、国民の間で割れているのです。

僕が劇作家協会の内部で声を挙げた。これはみなさんとしてはチャンスです。なぜこのアピールを出す必要があるのか、その議論を深める絶好の機会です。もっと言えば、そもそも劇作家協会がどの範囲の政治問題にまでコミットすべきか、といった議論を深めるチャンスです。しかるに、今回のみなさんの対応には、僕の問いの核心部分に答えようとする意思を感じることができませんでした。それが残念です。

では、僕の問いの核心部分とはなんでしょうか。僕は、「自分の信念とまったく異なる政治声明に賛同しているかのように誤解されることが苦痛です。」と書きました。そしてそれを前提とした上で、「言論表現委員会の方々は、私のような政治的立場の会員に、どうして欲しいのでしょうか?」という質問をさせていただきました。これは以前僕が書いた、「私は私の思想信条の自由を協会内においてどのように確保していけばよいのか?」という質問と通底する問題です。つまり、――表現に携わる人間が、表現者の協会において、自分の信念とまったく異なる言論・表現に加担させられてしまっていることに苦痛を覚えている。そのことを、みなさんがいかに受け止め、いかに対応するのか。これこそ、言論・表現の問題ではないでしょうか。僕はみなさんに、そこを考えていただきたいのです。

集団というものは、その構成員一人一人の考えが違って当然です。だからこそ、意思決定のために代議制が採用されているのでしょう。しかし、表現者は本来、少数の意見をこそ、つまり、意見の多様性をこそ豊かさとみなす立場に立っているのではなかったでしょうか。多数決などとは無縁のところで、我々は表現を行っているのではなかったでしょうか。

みなさんもまた、多様性を大いに尊重されていることは承知しております。だからこそわざわざ僕と面談の機会を設けてくださり、また、「『どうして欲しい』というような要望を協会は出す立場にありません。」とおっしゃってくださったのでしょう。個人の意思を尊重してくださっているのだと思います。ただ、ここに矛盾があります。みなさんが会員個人の考えを最大限に尊重したいのであれば、「法人としての協会の意見」など最初からまとめなければ良いのです。みなさんは、意見を集約し、集団としてアピールをお出しになった。そして、「協会は『政治的不一致があり得るあらゆる問題について沈黙する』という立場には立ちません。」とお書きになった。当然、このことは多様性を損なう危険をはらんでいるのです。その危険とどう向き合うのか? 僕が協会に問うているのはそこです。

確かに、表現者の集団であっても、ここぞ、という場面では一致団結して戦わなければいけないのかもしれません。今がまさにその時である、とみなさんがお考えになっているのかもしれません。しかし、僕はそう考えていないのです。意見の対立がここにある。ならば、最終的には多数決や代議員によって決定さぜるを得ないとしても、意見の集約の段階では言葉を尽くしてほしいと思います。言葉の力を信じて、対話を行ってほしいと思います。

協会外の人間から見れば、「法人としての協会の意見」は、「協会の総意」とみなされることもあります。当然でしょう。また、総意だと見なされるからこそ、法人としてのアピールは力を持つのです。だからこそ、意見を集約するその時に、まさにそのことが我々の集団から多様性を奪っていく危険を、深く認識しつつ進めてほしいのです。

今回、個人でもよいから回答が欲しい、と申し上げたにもかかわらず、個人としては誰も僕の質問に答えてくださいませんでした。個人名で回答することには緘口令でもしかれているのでしょうか……。残念なことですが、これが、みなさんの政治的アピールの現状だろうと思います。なんとも窮屈な「言論・表現の自由」へのアピールではありませんか! そろそろ僕は、誰と話をしているのかわからなくなってまいりました。

みなさんはあの法案に賛成する人、あるいは、積極的に反対はしない人々と対話をするためにこそ、あのアピールをお出しになったはずです。こういった機会にこそ、みなさんには協会内の声に応え、しっかりと対話の力、言葉の力を見せていただきたい。普段、対話の大切さを説いているはずのみなさんが、いざ実際に意見の異なる人間を前にした途端、組織としての合議の正しさや、手続きの正当さを説明することに終始してしまったことが残念でなりません。どうか、天下国家に向かって政治的アピールをふりかざすよりも、目の前にいる他者を説得するためにこそ言葉を尽くしてください。僕は、目の前の一人を説得することから始まる対話をしか信じることができません。


ちなみに、前々回の回答に対して、僕はこのように再反論しております。
広田個人ブログ

続・劇作家協会への質問状、「安全保障法制等の法案」について(微調整版)


異論・反論があればぜひご意見を賜りたいと存じます。個人でも団体でも結構です。
どうぞよろしくお願いいたします。



上記の僕の問いかけに対して応じてくださった方が、言論表現委員会の中に2名いらっしゃいました。
谷賢一さん。そして、小松幹生さんです。
さらに永井愛さんが公式な回答の代わりのように、2015年08月31日づけでこの件に関しての対談を劇作家協会のwebにupしてくださいました。その他の言論表現委員会のみなさんには残念ながら今日に至るまでなんらの言葉もいただけておりません。どうして仮にも文学者・劇作家ともあろう人たちが自分たちの責任において出したアピールに対してこうまで沈黙を貫こうとするのか? 僕にはこの沈黙の意味がまったく理解できません。 


さて。谷さんは、僕とは友人の間柄ということもあって私信の形でメールをくださいました。つまり、公式な返答ではありませんでしたので、ここに彼の送ってくださった言葉を掲載するのは自粛いたします。しかし、彼自身はあまり積極的にアピールを出したがっていたわけではない、という立場であったことだけは申し添えておきます。つまり、彼とは正面からの議論にはならなかったのです。

小松幹生さんはほぼ唯一といってもよい、正式な回答をくださった方です。それに関してはまた改めて書きたいと思いますが、一介の協会員からの問いかけに対して、真摯に回答をいただけましたことを深く深く感謝しております。救われた思いでした。ありがとうございました。ただ、小松さんもまたアピールを積極的に出したい、出すべきだ、と考えておられるというよりは、アピールを容認する、という立場に近く、これまた正面からの議論には至りませんでした。


結局、積極的にアピールを出したがっているのは誰なのか? 永井さんだけは顔を見せてくださいましたが、残りの方々のことはわかりません。言論表現委員会の方々もみなさん、それぞれにお忙しい立場でしょうから返信に時間がかかっているだけかもしれないと考え、今か今かとお返事を待ってみたのですが、今日に至るまで何の反応もありませんでした。

言論でやりとりをする覚悟が無いのならば最初から政治的アピールなどお出しにならなければ良いのになあ、というのが僕の正直な感想です。僕はこの件に関しては、まったく納得していません。そろそろ僕のような人間が協会の方々とともに歩むことは難しいのだろうな、ということもわかってまいりました。ただ、有意義な協会を創ってくださった先輩たちへの敬意を僕なりに抱いているつもりでおりますから、焦らずゆっくり、それでも、今年中にはなんらかの結論を僕なりに出そうと考えております。

長文、お付き合いいただきましてありがとうございました。
今年は、いろいろと自分の考えをちゃんと言葉にして発信していく年にしてまいりたいと思います。


 
コメント
演劇に関しては全くの素人ですし、政治的思想も自分の目で見て調べて感じた結果を投票に活かしてる一般人です。
好きな俳優さんが居て、その方が出られるという理由から舞台演劇をここ5年ほど見てきてる事になったのですが、
非常に戦争物のお話や演出が多く、昭和の小学校時代に、道徳の授業でずっと教師から左よりな考えを教えこまれて来たのと似たものを観劇中に感じています。

私は全く詳しくないので、難しい事は言えないのですが、最近舞台を見だした一般人としては何か不思議な感じがしてます。
反戦や体制批判を題材にしても構わないと思っていますが、私が見てる狭い範囲でもそれ一辺倒になってきてるのを肌で感じています。
もっと多くの沢山の思想を持った方々に通じる良い作品をみたいと思っているので、今後の舞台演劇がどういった流れになっていくのだろうと言う思いで稚拙ながら書き込ませてもらいました。
広田様のブログの記事を今後も注視して行きたいと思っています。
乱文失礼しました。
  • ダイス
  • 2016/01/18 1:16 AM
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